MX人口を増やす考えかた雑文 その2「離脱になるストレスを減らす」
先日投稿した「MX人口を増やす考えかた雑文 その1」は、Twitterで自分でもびっくりするくらいの関心と反応をいただいた。
2日後の現在でTwitter経由だけでブログ記事のリンクボタン押してきた方は1000人くらい。それだけMX界隈の皆さんが興味あるテーマなんだなと実感しました。
その1のおわりで、
新規ユーザー獲得(バケツに水を入れる)も大事だけど、まずは離脱を減らす(バケツの穴を塞ぐ)をしてからじゃないと、せっかくの投資が無駄になるので順番が大切
という話をしました。
その2は、「バケツの穴を塞ぐための考えかた」をゆるゆる書いてみます。
で、、更に次のその3は「バケツに水を入れるための考えかた」も書いていく予定。(そのうち時間ができたら^^;)
その2~その3のキーワードは、ユーザーの体験の見える化です。
見える化して初めて共通言語ができて、建設的で噛み合った議論がしやすくなります。
いきなりですが、上記の図は
・MXユーザーを観戦者とライダーに分解した横軸
・プラスの楽しい体験と、マイナスの不快な体験の縦軸
2×2=4象限に分解してあります。
今回の話は、下の不快なストレス体験ゾーンの改善について、です。
前回のブログへのSNSの反応でもご指摘いただきましたが、MXユーザーというのは観戦者とライダーは分けて考えたほうが整理しやすいので分けました。(もちろん観戦しつつライダーも楽しむという重複の人も大勢いますが、シーンごとに考えたほうが整理しやすいというだけです)
観戦して深みにハマるプロセスと、ライダーとしてMX体験して深みにハマるプロセスはそれぞれ違います。同様に、観戦での不快な思い、ライダーとしての不快な思いで離脱してしまう内容もそれぞれ違います。
ここでいう「不快な思い」というのは言葉はきついですが、人によっては無自覚だけど少しストレスな感じくらいも含むと考えてください。
(会社に文句言ったり、退職、訴訟するほどには腹は立たないけど)ちょっとセクハラ~パワハラめいたこと言ってくる会社の上司のセリフ
社内で見たい資料があるけど、探しても見つからなかったストレス
仕事ならばお金を稼ぐために多くの人は軽微なストレスを我慢しがちですが、MXは趣味の世界なので軽微なストレスでも、あとあとで積み重なると離脱の一因になりえます。離脱の引き金ほどではないけど、小さな後押しにはなってしまうみたいな感じで効いてきます。
減らせるストレスは、とにかく減らすというのが、水漏れ=離脱を減らす施策の鉄則です。
MXユーザーの離脱を防ぐ施策を考える、
3つのステップ
離脱を防ぐ考えるステップは3つあります。
1.行動プロセスごとのストレス要素をなるべくすべて洗い出す
2.ストレス要素ごとの解決策を洗い出す
3.解決策を”解決時の成果インパクト”と”解決の実現性”の2視点で評価し、実行の優先順位を決める(解決策に必要な時間・お金・人は限られているので精査)
うむ・・・文字にすると簡単ですが、イメージわきにくいですよね?(苦笑
ということで、1の行動プロセスごとのストレス要素洗い出しだけですが、私が例でやってみました。
相当細かい字なので、こちらのリンクにGoogle docsで同じものがおいてあります。字数多いです^^;
上記の表は、MXライダー軸に寄った形ですが、一部一緒に観戦も混ぜて書いてしまっていますが、時間があればライダーと観戦者は分けたほうが丁寧にやれると思います。
ストレスで書いた内容は
・自分が体験した
・身近な人で見かけた
・他人から聞いた話
はすべて書いてみましたが、当然、私と異なる経験視点のある方は沢山いらっしゃるので、現時点でMX業界のストレス要素の網羅性はないと思います。
不足が目についたら、ぜひ自分や仲間とGoogle docsに自由に書き足してみてください。(書き足すのが気が引けたら、御自身でコピペしたものを改変して書いてみていただければ)
ちなみに自分で書き出したストレス要素で緑色に網掛けしているのは、情報一元化で解決しそうなものです。
私個人のストレスを振り返ると、MXに関わる情報(地域ごとのコースの情報、ウェアやパーツが買える店、チューニング依頼できる店、メンテナンス費用の相場、ジャージプリントやデカールをオーダーできる店や人、MFJに限らずアマチュア向けレース開催情報など)が一元化がされていないことが大半で、それらの解決策の大半は、お金ではなく手間で解決できそうだなと見える化してみてわかりました。情報のまとめサイトをつくればいいわけです。
いまではECでBTO Sportsや、国内店舗ではRS Beatleさんなどで当たり前のように買い物してますが、最初はそれを探すのすら大変で「BTOは本当に国内まで届くのか?」と怪しんで、決済ボタンをクリックする手が震えた記憶があります(もちろんちゃんと届きましたw
ストレスの種類を大まかに分ければ、
・ヒト~コミュニティ由来のストレス
・モノ~設備由来のストレス
・情報の不足~検索性由来のストレス
と3つに大別できるはず。
人由来のストレスは、仕組みと同時に人の意識変革も重要です。例えば、御自身がメンテナンスにこだわっているのは良いのですが、それを初心者にもやたら高いバーのセルフメンテナンスを要求して「◯◯すべき」「タイヤ交換くらい自分でやらないやつはダメ」とメッセージするのは、これは発信側には悪気はなくとも本人には「あぁ、そこまでやらないとMXバイクは維持できないんだ(自分には無理かも)」という心理的ハードル=ストレスになってしまいます。
モノはお金のかかる設備投資もあれば、例えばコースの案内板の設置とか、ルール解説資料の配布とか、わりと気軽にできるものもあるものも混ざってくるはずです。
情報は、基本的には無料なので、これは情報の整備して一元化する工数だけで、対応コストは安いはず。
MX中級者になって慣れると初心者のストレスは忘れてしまう
ここ3年くらいはMXコースで出会った皆様、SNSで出会った皆様と交流も増え、非常に楽しい人付き合いもあります。しかし、最初の2~3年位はある種、息子とふたりで黙々と親子関係だけでほぼ人間関係を完結しながらMXしてました。(もちろんコースで気持ちよく挨拶してくださり、挨拶レベルの交流は多々ありましたが、そこまで深い話をするほどの関係ではなかったり、そういう深い会話がある方の数は限られていました)
でも、これが息子もいなくてひとりでMXはじめた、MX再開したという環境だったら、ここまで長く続かなかった気がします。
つまり、すでにMX業界にどっぷりハマってしまった現在の自分は当たり前に思っている情報や人間関係でも、MXをはじめた当時の自分には当たり前ではなく、その頃のストレスを必死に思い出して書き出しました。
自分を含めて、MX業界のできごとや暗黙のルールに慣れてしまい、ストレスはストレスとして感じなくなってきています。(逆に豊かな魅力に沢山気づいてハマっていくわけですが)
でも、MX業界が裾野を拡げてユーザーを拡げたかったら、可能な限り、親切にストレスを軽減する仕組みの施策を積み上げていくことが重要です。
中堅どころのユーザー個々人は親切な人は多く、「なにかわからないことがあったらなんでも聞いてよ!」と思っています。
実際に初心者でも、自分と性格や価値観の相性の良い親切な先輩を見つけた人は、離脱しにくいと思います。
でも、なかには知らない人と関係をつくるのが上手ではなかったり、または(相手は親切心であっても)関係を近づけた人やコミュニティと相性が良くなかったり、女性だったら男女比率がいびつで少数派故に、女性というだけで過度に干渉されたりで嫌な思いをして去った人もいるはずです。
そのあたりは、個々人の心がけだけでなく、それらを仕組みとして軽減できるアイデアがあったほうが離脱率は減ります。(極論に聞こえるかもしれませんが、女性専用の電車車両のように、女性専用コースや、女性専用パドックエリアがあれば、女性だけで落ち着いたコミュニティでやりたい女性にはメリット~効用はあると思います。)
もちろん水道設備がない場所に水洗トイレがあったらいいな・・みたいな、今すぐ解決できないことは、その環境やお金の制約のなかでベストを尽くすしかないので割り切りも必要です。
ただ、慣れた人にはストレスじゃないけど、初心者にはストレスなことに敏感になり、そこに優しく手を差し伸べる仕組みを積み上げる。
ここが離脱を減らすポイントです。
ちなみにマーケティングの一般論として、
離脱が一番多いのは、初回の体験から2回目の体験への移行時です。
要するに、観戦もライダー体験も、一回目に楽しい思いをして、不快なストレスを感じないようにしないと、2回目はないということです。
業界から発信する情報は中級者以上向けに偏ってしまう構造がある
SNSでの個人アカウント、雑誌ダートスポーツ、世田谷レーシングのTheNewsMotoみたいなMX情報を発信するメディアはそれなりの数があります。
でも、それらはどうしても絶対数のすくない初心者向けや、これからMXをスタートすることに関心を持っている層に向けた解説にはなりにくい構造があります。それではページビューが確保できないので。(たまに初心者向け◯◯みたいな特集もありますが、何かの断片で網羅性がなかったり限界があります)
ニッチな嗜好品趣味であり、初心者は離脱するか中級者への卒業していってしまうため、基本的に雑誌やメディアの固定ユーザーは中堅ユーザー以上がコアなお客さんになってしまう構造があり、みなそこに最適化せざるえない構造があります。
私もMX用のTwitterアカウントでは、MXリテラシーがある人向けに身内の馴れ合い話になりがちです。(それこそがやってる本人は楽しいのですけどね笑)
ストレスを洗い出したら、解決策を洗い出して、実行する解決策を絞り込み、実行の順番を決めてJust do it!
ダラダラ書いてしまいましたが、Step2~3は
2.ストレス要素ごとの解決策アイデアをできる限り洗い出す
3.解決策アイデアを”解決時の成果インパクト”と”解決の実現性”の2視点で評価し、実行の優先順位を決める(解決策に必要な時間・お金・人は限られているので精査)
うむ、書いてあるとおりです。これはそこまで難しくないので解説はしません。要するに、解決してもインパクトの低い課題且つ解決の実現性が低いことやっても非効率というだけです。
解決したらインパクトが大きく、解決の実現性が高いものに集中すべきです。(解決の実現生のなかに時間軸は多様であったよいと思います。すぐに解決できるものもあれば、時間をかけないと解決できないものもあるので)
ちなみにちょっと前に話題になったMFJのゼッケンナンバーのルール変更ではSNSでは賛否両論話題になったのですが、マーケティングのプロという視点から評価すると、観戦初心者のストレスを減らすメリットもあるけど、ライダー個人のブランド化~コアファン育成には明確なマイナスで、トータルではややマイナスかなと思う。
すでにロードレースやモトクロスで、海外でより興行が盛り上がっているレースシーンを見れば固定ゼッケン制度は根付いており、一定の効用メリット実績があると評価しても良いと思うので。チャド・リードの22、ロッシの46など、ナンバー固定だからこそライダーはブランドとして識別・記憶されやすく、SNSアカウントネームやグッズにも番号によって継続性が生まれています。古いですが、バリバリ伝説の巨摩郡も56という番号のブランドがある。
少なくともゼッケンルールの変更は、全日本MX観客ユーザー減少の要因としては、相対的にインパクトの大きなものには見えないです。それ以外に優先度が高いものがあるはずで、同じルール変更の意思決定をするにしても、よりインパクトの大きな問題解決施策のおまけとしてセットで発表しないとネガ意見が目立ってしまうため、広報のやり方としては非常にまずかったと思います。(もちろんこの施策ひとつでMFJ全否定する意図はありません。きっと広報のプロがいない、投資してこなかったという理解です)
私の仕事はマーケティングと書きましたが、世界的に有名な大企業であっても、やっていることは、この記事に書いてあるようなことを、めちゃ丁寧にやって、施策実行に巨額の投資をしているだけで、考えかたの基本は一緒です。
水漏れ離脱を減らし、ユーザーとしての継続率~期間を高めててから、新規顧客獲得に投資をする。それだけです。(MXユーザーとしての継続期間が高まるほど、業界内でお金を沢山落とすので、新規顧客獲得に投資できる金額が大きくても回収できるようになり、ますます新規顧客に投資できるポジティブなサイクルが生まれます。逆にMXユーザーの離脱率が高く、あまりお金を落とさないならば、新規顧客獲得の投資金額が限られてしまい、成果もでないし、仮に投資しても長続きはしません)
下田丈選手がスター化したときは最後の特需かも!?そこに備えよう
ここ最近、日本人の下田丈選手がSXで活躍しています。もしかしたら、彼が錦織圭選手のように日本でもスター扱いされてマスメディアに沢山出る日が来るかもしれません。
でも、それはMX業界にとってチャンスでもあり、危機にもなりえます。
下田丈選手の走りや笑顔に惹かれてMX観戦に訪れた「にわかなミーハーなファン予備軍」が、国内のMXレース観戦にきたとき、私たちMX業界がストレス体験を最小化しておく仕組みを積み上げておかないと、その人達の多くは初回でがっかりして離脱します。一度がっかりした人を、再度引き戻すのは、初回体験に引き込むよりも大変です。
*実際にテニスやラグビーも特定スター選手ブームで一時的に観客増えても、その後の動員数やスポーツをやる人の伸びは期待ほどではなく苦労しているケースは沢山あります
つまり、下田選手のスター化のような特需や機会をMX業界がうまくMXユーザー増に活かせるかどうかも、業界内私たちの日頃の地道な改善の積み重ねによって結果が変わってきます。
繰り返しで恐縮ですが、「ユーザーのストレスを減らし、離脱を減らすMX業界基盤をつくる。」これが、まず私たちがやることかなと思います。
そのうえで、さらなる楽しい魅力的体験を積み重ねていく。そんな順番です。
おわりに
その1でも書きましたが、私も「答え」は持っていません。でも、MX業界の皆が目線をあわせて一緒に考えやすい考えかたのたたき台くらいはなんとか提供したい。そうすればやる気と権限ある方々が、ご自分なりに活用されて成果出してくださると信じています。
それが自分にできる唯一の貢献だと思うので。
ということで、またそのうち、その3で「プラスの体験価値の高め方や新規顧客の獲得のしかた」を書くかも。忙しくて書けないかも。そのうち・・です(笑)
*ちなみにGoogle docsの表=考えかたの枠組みはご自由にダウンロードいただき、改変して活用いただいても問題ないです。著作権なんて主張しません。フリーでお使いください。
*その3で書く、ポジティブなプラスの楽しい体験要素の洗い出しも、やることは基本的に同じですし、この枠組みは同じように使えます。下半分をストレスではなく楽しい体験を書き出し、再現性を高める施策を考えて実行するのみです
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