ビジネスモデルで考えるMXウェア

最近のモトクロスウェアは、個人的にはビジネスモデルを革新するイノベーションが起こりつつあると感じています。

現実には、すでに起きてるのだけど、まだ様々な理由から主流には至っていないだけで、断片的にはすでに起きている未来があると思うのですよね。

今回はそのへんの考察を超長文で。

そのイノベーションを先行して着実に実行しているように見えるのは、2社あり・・・

ひとつはALiAS


こちらは、サイトでも「DIRECT 2RIDER」と訴求しており、はっきりと流通~小売を中抜きする意志とコンセプトを打ち出しています。

現在は2016年モデルの売り切りセールをやってますが、その価格はなかなか強烈でして、、

ざっくり最近のレートで1ドル=100円換算してしまうと、、

・ヘルメット 1万2千円

・ジャージ 1300円

・パンツ 3900円

・グローブ 1000円

といった具合に、ジャージ、モトパン、グローブを買ったところで、わずか6200円です。もちろんそこに送料は加わるのですが、この価格は強烈ですね。

SALE前の定価になると、ジャージで4000~5000円、パンツで1万2千円~1万4千円程度と、SHIFTのようなメジャーなメーカーの低価格ラインくらいの常識的な価格になります。


アパレル関係のビジネスの通例ですが、SALE価格で売っても損はでない原価にしてあるはずなので、流通マージンや流通で溜め込む在庫ロスをごっそり削った結果のSALE価格と言えそうです。


今のところ、有力どころのライダー契約は、ALiASにチームオーナーが出資している関係性コネのあるGEICO HONDAの250ccチームのみで、マクグラス級の強烈なスターライダーはいないようです。

また、日本で取り寄せて着てみた方からは「パンツの履き心地はいまいち」なんて声もあり、ブレイクするには、契約ライダーや製品品質でもうひと頑張り必要かもしれませんが、そのビジネスのポテンシャルははかりしれない破壊力です。

私も個人的には、もう少しデザインのオリジナリティを頑張って欲しいな、と感じます。どこかの有名ドコロのメーカーの色使いをパクったものが多い印象なので・・・^^;

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モトクロスというただでさえニッチな流通の販売店からすれば、このようなメーカーと消費者がダイレクトにつながる販売形式が確立してしまうと、本当にひとたまりもない。

でも、この流れは、進むことはあれど、戻ることはない、不可逆な流れだと思います。

モトクロスのようなニッチな趣味カテゴリの場合、そこのユーザーの多くの関与度が高く、情報リテラシーもあがる傾向にあります。

そのため、メーカーの立場からすると、直販できるユーザーの母集団を形成したときに、リアルな量販店チャネルでないと接触できない低リテラシーなユーザーの取りこぼしが極めて少ないと想定されるからです。

例えて言えば、テレビを売るなら、直販にアクセスしないライトユーザーが沢山おり、販売店を経由しないと取りこぼす層が多いのですが、元々マニアックでウェアを買い慣れた人が多いモトクロスユーザー市場なら、直販に切り替えた時に取りこぼすユーザーも少ないと言えます。


いまはALiASだけの話ですが、いずれFOXやTHORやSHIFTなど、有力なメジャーなウェアメーカーは、確実に直販を志向し、販売店の顔色を伺いながらも、いずれシフトしていくはずです。

最初は、販売店と直販の併用。そして、いずれ様子をみて一本化するメーカーが出てきてもおかしくない。

業界のエコシステムを破壊して良いのか?という倫理観の話では色々あると思うのですが、メーカー側のビジネス戦略としては当然検討しているはずです。

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で、、、そんな先進的なビジネスモデルのALiASでも、旧態依然としたことがひとつあります。

それは ジャージのネーム&ゼッケンのアイロンプリント です。

ALiASでも、ネームとゼッケンを入れるオプションを選ぶと、50ドル=5,000円の追加になります。

アイロンプリントだけは人手がかかるので、この価格になるのは致し方ないでしょう。


ただ、最近個人的に感じるのは、このアイロンプリントのネガ要素です。

・重量が増える

・着心地がゴワゴワする

・通気性が悪くなる

・剥がれてきたら、再度アイロンがけが必要でメンテの手間がかかる

などなど。


最近のファクトリーライダーは、ジャージへのアイロンプリントで上から付加するのではなく、最初からネームとゼッケンをデザイン処理したうえで昇華式プリント(生地にインクを染み込ませるような転写)されたジャージになっており、ジャージの重量も増えず、着心地も通気性も悪化せず、剥がれてくることもない・・・そんなジャージへとシフトしています。


当然、ミーハーな私を筆頭に、そういうジャージが欲しくなるわけです(笑)


そこで、そんなニーズに対応しているのが、MXウェアのビジネスモデルのイノベーションを牽引する2社目のCANVAS MXです。

こちらはロウンチした頃はサイトの使い勝手が悪かったのですが、徐々にUIも改善され、取り扱いアイテムも増えており、そろそろオーダーしてみようかな?なんて思わされる雰囲気です。

私の素人デザインでも、根気よくやれば、こんなTroyLeeDesignのCole Seely風なジャージがつくれます。当然背面もデザインとしてネームやゼッケンを入れられます。


まだ、オーダーはしていないのですが、アイロンプリントなしで、スポンサーロゴ~ネーム~ゼッケン入りのジャージが手に入る環境はすでにできているようです。

ちなみに色数で価格が変わるようですが、私の場合、これを発注すると送料抜きで約1万1千円でした。

通常のジャージを購入し、前面と背面にアイロンプリントをオーダーしたら、価格の総額は同じくらいではないでしょうか?

実際に実物を見ていないため、ジャージの品質面はわからないのですが、サイトのUIの改善速度をみると、それらが向上していくのも時間の問題かと思います。


ちなみに、ここ数日で追加されたのは、ピットシャツやパーカーのオリジナルデザイン・サービスです。


ジャージのデザインを転用すると、こんな感じ。(細かく最適化していないため、ところどころ雑な処理が残ります笑)

チームでお揃いのものをつくるニーズ、けっこうありそうですよね。

すでに全日本を転戦されているチームは、お揃いのチームウェアを着ていらっしゃる様子ですが、そこで介在されているであろう顧客から注文を受けているデザイナーの方の中抜きになってしまう仕組みと言えます。(もちろん素人が良いデザインをできるわけではないため、デザイナーの方の根源的な価値はなくならないのですが、最初にコンタクトする窓口の立場としてはCANVASは競合と言えます)

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細かい話は抜きにして総括すると、CANVAS以外のメーカーも、いずれ技術やコスト面の障壁を乗り越えて、スポンサーロゴ~ネーム~ゼッケンを顧客ごとにデザイン処理して作成して出荷するサービスを提供する日はやってくるのでは?と思うのです。

現在アイロンプリントでビジネスをされている方々がいらっしゃり、私も大変お世話になっているのですが、コスト面が同等なら、やはり最初から生地に転写されていたほうが、ユーザーとしては合理的だという事実は否定できず・・・。

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私はCANVAS MXの会社の実情はよくわからないのですが、想定するに、本当にプロダクトを生産する設備を持っている会社の匂いはしてきません。

カスタムデザインとオーダー決済するWEBサイトのみを自前でつくり、あとは製造の外部委託先を駆使して、ユーザーにデリバリーしている可能性が高そう。

おそらくALiASも製造は自社ではないでしょうし、そもそも大手のFOXやalpinestarsもウェア類を自社で製造しているかはあやしい・・・どこか製造請負の会社があるはず。それは別に悪いことではなく、現在のアパレルビジネスの業界構造からしたら、製造を外注するのは当然のことです。


これが何を意味するのかと言えば、この変革期には、誰もがモトクロスウェアのメーカーになるチャンスがある!ということです。

そう、ユーザーに認知されるブランドと、オーダーを受け付けるWEBサイトさえあれば、メーカーになれる、という。


もちろん、いきなり無名のメーカーにオーダーする顧客は多くはないでしょう。

そのためALiASは、コネをつかってGEICO HONDAと契約して知名度不足を挽回し、CANVAS MXはいち早くフルカスタマイズデザインに対応し、私のようなミーハーなユーザーの興味を喚起(笑)しており、参入の仕方には相応の戦略なり仕掛けは必須です。


たら、れば、ですが、もし私がMXの販売店やアイロンプリントのビジネスに関わっている当事者であったら、有名ライダーに共同出資を持ちかけ、契約ライダーとして巻き込み、新しい時代のビジネスモデルで、

・顧客にダイレクト販売

・スポンサーロゴ、ネーム、ゼッケンは転写処理してジャージを出荷

そんなMXウェアブランドを立ち上げる努力をしてるかな・・・なんて思ったり。


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最近のモトクロスウェアの技術トレンドを見ていると、FOXやalpinestarsが牽引して、軽くてストレッチ性の高い新素材を導入し、技術的な変化も見受けられます。(そのあたり私が着ているTroyLeeDesignは明らかに遅れています。2017年型のalpinestarsのウェアを試着したとき、パンツの膝部分の自由度の高さと軽さは衝撃的でした)


ただ、そのような素材の技術革新もいずれ1~2年で他のメーカーに波及するはず。製造請負メーカーはこのあたりをキャッチアップし、取引先のブランドに持ちかけるのが常ですから。


そういう意味で乱暴に言えば、5~10年の時間軸でMXウェアの業界を観た時に、いちばん大きな構造変化は


・販売店を中抜きした直販化の波



・ジャージにロゴ、ネーム、ゼッケンをオリジナルで昇華プリントするカスタムオーダー化の波


この2つだと思うのですよ。


そのうち、大手ウェアメーカーもこの2つはやるはず、ぜったい。


このあたりは業界内の人間関係や流通とのお付き合いのある方には摩擦が起きてタフなことかもしれませんが、そのあたりのしがらみを抜きにして、顧客視点と技術やコストのメガトレンドだけを考えると、この変化は時間の問題な気がする、、、というお話でした。


この手の話はモトクロス以外の業界でも起きているお話ですが、MXでも起きているのか!!と気づいて、思わず長文を書いてしまいました。


釈迦に説法な内容ばかりで恐縮です。お粗末さまでした。

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YamaGuuci#29

「速さより、ミーハーさを楽しむ親子」20年ぶりにモトクロスに復帰したオヤジと息子で、週末ライドを楽しんでいる親子サンデーレーサー / HUSQVARNA FC250 & TC65