MX人口を増やす考えかた雑文 その3「新規ユーザーの獲得」
前回の雑文その2を書いた1月末から時間あいてしまったのですが、その3です。
「新規ユーザーの獲得の考えかた」です。
ここで言うユーザーとは、
・MXの乗るライダーとしてのユーザー
・MX観戦にくるユーザー
の両方をまとめて指します。もちろん個別の施策におとすときは、それぞれ乗る人と観る人の獲得方法は違うはずで、分けて考えるべきですが、話が複雑化するので便宜的に一緒の言葉で書いておきます。
「お金をかければユーザーは増える」の落とし穴
最初に、「新規ユーザー獲得」でよくある大きな考えかたの誤りは「沢山マス広告したり、テレビで報道されれば、お客さんが増える」というような、お金をかけて接触人数を増やせば成果が出るというやつです。
ただ、これは大失敗を招く考えで、お金を用意できて巨額投資ができても滑るパターン。
少々乱暴ですが、ユーザーの獲得プロセスを数値化し、公式化すると、、
”獲得施策の接触人数”×”初回トライアル参加への転換率”×”2回目参加リピート率”=定着した新規ユーザー人数
となります。
MXレース観戦や、MXライディング体験イベントへの参加に導く広告や報道記事に1000人接触したとします。
そこから10人が初回で観戦やライディング体験に参加したらトライアルへの転換率は1%です。そこから5人が2回目も引き続き参加したら2回目へのリピート率は50%です。
つまり・・・
接触人数1000人×初回参加転換率1%×2回目リピート率50%=新規ユーザー5人
という計算ですね。
この計算が成り立つと、論理的には接触人数を1000人の10倍の1万人に増やしたら、新規ユーザーも10倍の50人獲得できる計算になります。(実際には接触人数が増えてくるにつれて、関心度合いや所得などの客層も変わってくるので、転換率が落ちていったりしがちです)
まずは、初回参加転換率が高い”人の属性”×”訴求内容”を絞り込もう
接触人数を増やすのは通常広告費など、そこそこお金がかかります。(その究極は全国で数千万人に接触できるテレビCMです)
テレビCMは極端ですが、ネット広告であれば月数千円~数万円レベルでも広告は可能です。
ただ、そうやって接触人数を増やす前にすべきことがあります。
それは、初回参加転換率が高い「人の属性」と「訴求内容」を見つけ、初回参加への転換率を高める勝ちパターンを見つけることです。
人の属性とは、男女・世代・地域みたいなものもあれば、趣味や価値観みたいなものでも良いです。
例えば、MXレースに興味もって観戦してもらおうと考えたとき、
「MXには興味ないけど、ロードレース観戦してる人」
「レース観戦はしていないけど街乗りバイクには乗っている人」
「バイク乗りではないしバイクのレース観戦もしてないけど、車のレース観戦は好きな人」
こういった属性の人は、バイクやレースに現状まったく関心がない人よりも、関心をもって初回トライアルする可能性は高そうです。
では、どうやってその「勝ちパターン」を見つけるのか?MX業界の状況を考えると、まだ別にお金をかけた難しい高額なマーケティング調査は不要です。
・知り合いに観戦やMX体験の声をかけて誘って反応した人をリストアップ
・観戦やライディング体験まで実行してくれた個人の属性や、その方たちが関心をもったポイントを洗い出し、共通性や出現率の高い属性・理由を抜き出す
上記のような分析を、日々のお誘い活動のなかでやって、確率の高い勝ちパターンを見つけるのが第一歩です。
ちなみに私のモトクロス復帰後の7年間では
・全日本MX@オフビ観戦に誘って初観戦から、そのままハマってリピート化した友人が1名
*男性でF1レースファンでカメラ撮影好き。すっかりMX撮影にハマり、毎年全日本MXオフビを観戦~撮影にきてくれています
・オフビの「モトクロスごっこ」に誘って参加した友人は4名。そこからMX定着したのは1名のみ。定着した1名は、年に1回程度のペースで練習に留まり、その方は、自転車BMXが趣味で、幼少期にMXしてた過去経験者
よって、私の心もとない実績からすると、観戦に誘うなら、「車レース好き」×「カメラ好き」あたりは打率高そうな母集団に見えます。(ちなみに私が仕事でお手伝いさせていただいたCSテレビ放送局は、車の番組コンテンツが多めだったので、新規獲得施策の展開場所を、車のレースイベントに変更したら、同じ投資額に対して、過去施策の3倍のユーザーを獲得できました。それくらい訴求対象を適切に選べばパフォーマンスは変わります)
しかし、MXライディングに興味持ちやすい母集団や、定着しやすい属性は、正直まだよくわかりません。少なくともバイクに乗ったことがない人をうまく誘う文脈を私はまだ見いだせていないです。
いきなりバイクとトランポとウェアを買ってスタートしましょう!!は、なかなかハードル高いですね、やはり。
個人的には、CRF125Fくらいの気軽なバイクとウェアのレンタル+難易度低めのコースを自由に走れる月額定額制(月1~2万程度?)あたりのプランがあると、まずはMXライディングを始めやすいのかなぁと思います。(採算成り立たせる方法ありそうな気もする。ジムのように稼働率低い会員も出てくるので)
すくなくとも、一式買う手前に、もうちょいはじめやすい方法プランがあると、MXライディングは初回体験から2回目への移行率は大きくあがりそう。
「そのプラン、誰が投資してリスクとるのよ?」な話はあるのですが、そこはもうちょい試行錯誤したら見いだせそうな気がします。むずいですかね???
MX観戦だったら、観戦そのもの以外でも楽しめるBBQ体験やら、インスタ映えするバイクと撮影できるセットやら、何か思い出体験を充実させ、家族で楽しめるアクティビティとするのも大事かなと思います。いまもやっていないわけではないと思うのですが、そのクオリティをもっとあげていく余地はまだありそうな。
この手の施策アイディアは、すでにMX業界に根付いた人に聞くと「そんなの別になくてもよくない?」と言われがちです。
なぜなら、そういうのがなくてもMXをスタートし、そのまま続いている人たちが母集団なので、バイアスがかかりまくってるからです(笑)
いままでMX業界に来なかった層、一度来ても二度目以降がなかった層は、違う感性とニーズがあります。
新規ユーザーを獲得するには、業界内で残り続けている集団の視点だけでなく、その現状のやり方では来なかった~逃げてしまった人たちのニーズを探るという視点が重要で、そのときに「こういうアイディアだけど、魅力ある?」と聞く相手は、業界内のバイアスがない人のほうが適切です。
下田丈選手ネタで何度も実験を繰り返した「MX無関心層」への訴求方法
私は、仕事用途で運用しているTwitterでは約3万人強のフォロワーがいます。ただ、その3万人の中でMXに興味ある人はほぼ皆無です。
つまり、「モトクロスに無関心な人に向けて、いかに興味を持たせる訴求ができるか?」という実験環境としては、非常に最適です(笑)
ちなみに私が仕事用アカウントでMXネタをつぶやくとフォロワーが減るwのですが、でも、MX広めたいという気持ちもあるので、そこがぐっと我慢して、これまで下田丈選手のネタで何度も投稿を繰り返してきました。
その数々の投稿ネタへの反応を振り返ると、残念ながら既存のMX業界専門メディアの記事投稿は、内容がMX関心者に最適化されているせいか、反応はほぼありません。(反応するのはMXコミュニティの人だけです^^;)
ただ、それらの記事の紹介コメントに「下田選手はかっこいいイケメンなので観て!」と添えたら、女性のフォロワー2名ほど「たしかにイケメン!」的な反応はありました。
ただ、その後の観戦やライディング体験につながったかは不明であやしい(苦笑
SXレースの数分のダイジェスト動画を投稿しても、そこまで反応はない。やはり、無関心層にとって数分の集中視聴は長すぎるんですよね。
そうやって繰り返してきたのですが、ついに見つけた反応の手応え。
15秒時間ください。モトクロス無関心なフォロワーの皆様を置き去りに推し続ける下田丈選手ネタですが、レースで3位から一気に1位にごぼう抜きパッシングシーンのキレ味抜群な動画。興味ない皆様にこそ観ていただきたい15秒。下田丈選手は緑のゼッケン30番。https://t.co/xZDNeR6XLr
— 山口義宏 / 𝑰𝒏𝒔𝒊𝒈𝒉𝒕𝒇𝒐𝒓𝒄𝒆 (@blogucci) February 11, 2021
内容は下田選手の3台ごぼう抜きの動画。
15秒という短尺ながら、その凄さが無関心層にも伝わったみたいで、約1.7万人に投稿が目に触れ、そこから170人が動画を観たようです。約1%。これ少なく感じるかもしれないですが、これまでにない反応率です。日頃の他のMX投稿は更にクリックされません(笑)
「すごい走り×短尺動画であること」の重要性を感じました。
上記のコメントのように、これまでにない熱い反応も。
その後、全盛期のリード×スチュアートの当てまくりバトルの動画URLを教えたら、彼らはみな楽しんでくれていた様子でした。
ここで反応した人々は、関心があがっているので、今後レース観戦に声をかけたときの反応率はぐっとあがるはずです。
私の個人のつたない経験範囲ではありますが、私の実験の感触からは、下記3ステップで新規ユーザー獲得施策を設計するのが良さそうと感じました。
1:無関心者に短時間(15秒以内)で関心があがるコンテンツ(いまのところ下田丈選手にごぼう抜き動画がベスト)
↓
2:関心持ち出した人が、関心を深めるコンテンツ
(ここはいま手薄で手探り)
↓
3:具体的な観戦orライディング体験へのお誘い
この1~2をどれだけ多くの人に体験させて下地ならしをしておくかが、3の具体的な勧誘時の参加転換率の数字に効いてきます。間違いなく。
逆に言えば、1~2の地ならし無しでいきなり3の勧誘しても成果はきつそうだなぁ、と。
MX業界みんなの勧誘必勝パターンを持ち寄り、一番獲得効率が良さそうなものに投資をするのが、新規ユーザー獲得への急がば回れな近道
私の狭い経験の範囲の話を沢山しましたが、私が皆さんに伝えたかったのは、「俺が見つけた勝ちパターンすごくね!(ドヤっ!」ではなく、まだまだ、無関心層の関心を高めるコンテンツの形は探せばあるはず、それをみんなで見つましょう~ということです。
ここでのポイントは、新規ユーザーを増やすには、中級者が関心を持つポイントではなく、無関心層が関心を持てる内容や見せ方のフォーマットを探し開発するということです。
そこは業界の多くの方の実体験での成功例をもちよれば、三人寄れば文殊の知恵じゃないですが、私が上記で見つけた内容よりも、よりよいものがあるはずです。
その勝ちパターンを見つけてから、接触人数を増やす投資をするのが吉です。
優れた初回参加転換率の勝ちパターン見つける前に、接触人数を増やす投資をしまくると、成果出ないままに死にます。
新規ユーザーを増やすコツはそれだけです。マーケティングの本とか読んで、くそ難解な専門用語を覚えるよりも、この原則のほうが大事です。
あなたが、ご自分が誘って、実際に観戦やライディングしてMXユーザーになってくれた知り合いは、ひとりはいないでしょうか?
そのひとりの成功パターンを、汎用化して、接触人数を拡げることを繰り返す。これこそが新規ユーザー獲得のコツだと思います。みんながこれを愚直にやったら、MXユーザーは地道ながらちょびちょび増えると思います。(ワイもやりきれてない)
その勝ちパターンが洗練されて確率あがってきたら、広告とかPRとかでお金かかる投資すると、新規ユーザーいっぱい増えるかも!です。
ちなみに初回体験後、2回目のリピートを増やすうえで大事なのは、その2で書いたストレス体験を減らすことです。そこが改善されれば、2回めのリピート率もあがるはず(論理ではね)
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ということで全3回。くそ長文ですが、お付き合いいただきありがとうございました。
何度も書いたんですが、私もMXユーザー増やす秘訣は持ってません。
でも、秘策はなくて、上記のような基本に沿って、誰かがコミットして、勝ちパターン見つけ、投資までやりきれば、増えるはず。
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